2026年1月22日木曜日

カタログの額装

 1950年代のライカのカタログを仕入れた。

昔のライカのカタログや広告には野暮ったい図案のものが少くないけれど、これは一目惚れだった。


寒波の荒天が続く中で紙ものは無事に届くだろうかと案じつつ待っていると、稀覯本でも扱うような厳重な包みが届いた。開けてみると「シュミット リミテッド・トーキョー」と刷られたパラフィン紙が現れた。それをさらに開くと、往時のSLレリーズボタンの広告とともにセロファンの巻かれたカタログが出てきた。製本されているわけでもないカタログ一通になんという仰々しさだろう。パラフィン紙には透かしまで入っている。高級品が名実ともに本当に高級だった時代のカタログなだけある。


数日後の定休日、カタログの額装を頼みに、北方文化博物館内に工房を構える額縁店「インチフレームワークス」を訪ねた。

カタログを出して、同店の水品さんと中村さんに意見をうかがう。

「枠は細身で、木地に浅くニスの掛かった淡めの色味のものを考えています」

 「木地だとこんな感じです。ニスで仕上げたものは塗ってから時間が経つと色が濃くなっていきます」

「実際にサンプルを当ててみると、これだと少しぼーっとした感じですね」
 
 「そうですね。締まらない印象になりますね」
  
   「かえって濃い色合いのものが合うかも知れませんね。これはどうでしょう?木地に塗装したものですが」

「良いですね。イメージしていたのとはまったく逆だけど、こうして見るとこっちの方がおさまりが良いな」

こうしてフレームの仕様が決まった。図案の自在な雰囲気から、枠はサンプルよりも微妙に細身に、内側の面を曲面から平面へ変更して、サンプルと同じ塗りで作ってもらう事にした。


 「台紙はこの場合は白が良いと思いますが、こちらが純白で、こちらがややクリーム色の入ったものです」

「クリームの方が良いですね。純白は合わないな」

 「子供っぽい印象になってしまいますね」

「純白だと、カタログ自体の色もなんだか・・・」

  「ピンク掛かって浮いて見えますね」

「・・・そっちの、それは?」

 「これですか?」

「これは・・・なんか、同じ50年代の写真誌の背景とかにこういう色が使われてたような・・・」

 「あ!その感じ、私、分かっちゃったかも・・・」

  「そういうストーリーがあると、俄然見え方が変わって来ますね。それなら断然こっちの組み合わせだと思います」

こうして、台紙は一枚だけ残っていた米国製のちょっと変わった色味のものに決めた。


当初イメージしていたのとはまったく違う仕様での仕立てが果たして「これだ!」というものに仕上がるか、出来上がりが楽しみだ。

2025年12月22日月曜日

旭光学 Auto-Takumar 55mm/f1.8 管:360

 

オールドレンズの定番、旭光学時代のタクマー55mm/f1.8です。ごくありふれた標準レンズですが、開放の軟らかさから絞り込んだ際の鮮鋭さまで絞り全域で秀逸な描写を見せる完成度の高いレンズです。

本品は、希土類を使用した光学ガラスが採用される以前のオートタクマーですので、後年の55mm/1.8のようなレンズエレメントの黄変が起こりません。また、この時期の製品に限った特徴として、絞り表記が逆方向になっています。


タクマー55mmはオールドレンズとしては比較的手軽に入手できる事から流通している個体の多くが未整備品ですが、本品は分解整備済みですので、ながく快適にお使いいただけます。

前後キャップ付属。


・旭光学(ペンタックス) オートタクマー55mm/f1.8管:360・・・・・7,500円(税込み)

2025年12月21日日曜日

樫村 36mmレンズフード

 樫村のレンズフードです。


樫村は明治の中頃から写真用品を取り扱ってきた商社で、日露戦争後にはツァイスやコダックの代理店として中国や満州に支店を構えるなど興味深い沿革を持つ老舗です。

本品は太平洋戦争後に同社が発売したフードで、シェード部内壁に遮光バッフルを連ねた手の込んだ造りが特長です。



使用例

デザイン・造りとも無類のものです。枠径36mmのレンズ各種にお使いいただけます。


・樫村 36mmレンズフード・・・・・14,000円(税込み)

2025年12月7日日曜日

ケンコー ニッコールS・C 5cm/f1.4用レンズフード

 

古いケンコー製のニッコールS・C 5cm/f1.4用レンズフードです。
前枠のねじピッチが狭い時期のニッコール用であるため、一般的な43mm枠のレンズには取り付けできません。


ニコンの純正フード同様、本品も取り付け枠とシェードがセパレート構造となっており、シリーズⅦフィルターを挟み込んで使用できます。

使用例

枠部、シェードのいずれも真鍮の挽物で、打倒純正フード!とでも言いたげな高い品質が特長です。

数少ない細目ピッチのフードです。お探しの方へおすすめします。


・ケンコー ニッコールS・C 5cm/f1.4用レンズフード・・・・・5,500円(税込み)

2025年11月26日水曜日

KMZ JUPITER-8 50/2

 
Lマウント仕様

昔日のソ連製品の組み立て品質はどう贔屓目に見ても良いとは言えず、未整備のものはカメラもレンズも大抵幾分かおかしいものですが、光学系そのものの品質は優れているので、整備・調整することで快適にお使いいただけるようになります。

手軽に古典的な描写を楽しめるオールドレンズとしておすすめの一本です。

整備済み。


・KMZ ジュピター8 50mm/f2・・・・・12,000円(税込み)

2025年11月24日月曜日

KMZ Jupiter-3 5cm/f1.5

 


ZOMZ、Valdai製以前の、自国製の光学ガラスを使用して製造されるようになった初年1955年から翌56年に渡って造られたKMZ製のジュピター3です。

ゾナーのクローンとして知られているジュピターレンズですが、実際には設計面でも描写においても単にツァイスレンズのコピー品と呼ぶ以上の個性をそなえたレンズと言えます。

1947年試作

1948年初期量産型


使用例

光学系に重年相応の傷あり。

分解整備済み。
本品は整備時に連動カムの精度を追い込んで調整してありますので、問題なく距離計連動します。

純正リアキャップ付属。

まだそれほど妙味の認知されていない純ソ連製の初期の製品ですが、撮ってみると非常に面白いです。



・KMZ ジュピター3 5cm/f1.5・・・・・33,000円(税込み)




ツァイス製品と初期のソ連製品に見られる距離計連動精度の問題は、好事家にとっても整備する側から見ても頭の痛い問題です。これらは後年のソ連製品で見られる組み立て品質に起因する同様の問題とは要因が異なっており、主に設計によって引き起こされているように思います。

ツァイス製や初期のソ連製のLマウントレンズを整備すると、そのほとんどに複数のレギュレーションで分解組み立てを繰り返した痕が見受けられます。
これは、今日に到るまで複数回の分解整備を受けてきた痕跡ですが、私がこれまでに整備した中においてはその全てが、距離計連動精度と実ピントの兼ね合いを取ろうとする組み位置で逡巡したのちに、連動精度を犠牲にして実ピントを合わせるレギュレーションで組むという形へ収束していました。

これらのレンズの距離計連動精度はどの個体でも、距離環と実ピントが無限に合った状態で距離計の二重像がわずかに行き足りない(合致し切らない)状態となっていました。そのズレ量は今のところ全て同じで、少なくとも今まで私が整備してきたものに限って言えば、ツァイス製と初期のソ連製のLマウントレンズは、距離計連動カムが本来あるべき丈よりもわずかだけ寸足らずに造られている事になります。それが、誤差として許容できる範囲からほんの少し逸れた微差であるために、整備する側にとってはかえって混乱する要因となってしまうようです。

今回の個体では、上記のような状況に対して、本来の仕様としてあるべき組み位置を守ったうえで、純正の状態(連動精度にズレのある状態)に戻せるよう不可逆的な加工・改変を避けて、という2つの条件をクリアしつつ連動精度を出しました。

Carl Zeiss Sonnar 5cm/f1.5(ノンコート)


19万番台、1936年製

ノンコート時代の古いゾナーf1.5です。

最小絞りがf11の頃の個体

本品は残念ながら3群部(G6-7間)の周辺にバルサム剥離が発生していました。入荷時に3群のリングが緩んでいたので、緊締が緩んで剥離したものと思います。

光学系については剥離箇所以外の状態が不思議なほど良いため、貼り直しに出そうか悩みましたが、試写してみた結果、再貼合は後々必要性を感じた時に出せば良いと判断し現状のままとしました。この状態でも非常によく写ります。
3群部は剥離箇所が進行しないよう加熱圧着して組み直してあります。


ゾナーf1.5は、1932年の発売以来、1945年までの13年間に毎年最低1回は設計変更されていたという、ツァイスならではの偏執狂的なこだわりをうかがわせるレンズですが、古いゾナーの描写を楽しむには本品は好適な一本だと思います。

整備済み。

・カール・ツァイス ゾナー5cm/f1.5(ノンコート)・・・・・28,000円(税込み)

カタログの額装

 1950年代のライカのカタログを仕入れた。 昔のライカのカタログや広告には野暮ったい図案のものが少くないけれど、これは一目惚れだった。 寒波の荒天が続く中で紙ものは無事に届くだろうかと案じつつ待っていると、稀覯本でも扱うような厳重な包みが届いた。開けてみると「シュミット リミテ...